サラウンドの基本・基礎を学ぶ。立体音響を聴こう!

サラウンド星評

サラウンドの基本

サラウンドサウンド(略してサラウンド)とは包囲音、多チャンネル立体音響のこと。
人間の耳へは左右360゜、さらに上下からも音が伝わってくる。
ステレオ(2ch)といわれる左右だけの再生では、スピーカーのある方向のLRの音しか表現できない。(擬似的な再生・録音方法を除く)
サラウンド音声は、マルチチャンネル(3つ以上の音響信号)でリアルな臨場感を再現するために様々な種類が存在する。

チャンネル数

サラウンド再生方式は時代や技術の進歩により日々進化し、多チャンネル化して来ました。
1チャンネルは1スピーカーで再生するのが基本ですが、映画館のように広い空間では1チャンネルを複数のスピーカーで再生する場合もあり、必ずしもチャンネル=スピーカー数ではありません。

0.1チャンネルとは、20Hz〜120Hzの低音域のみが収録・再生される(LFE)チャンネルのこと。普通のスピーカーでは再生が難しい周波数なので、低音域専用スピーカー(サブウーファー)を使う。
人間の耳は100Hz以下の音の方向性を判断しづらいので、サブウーファーの置く場所には自由度があります。理想は前方の左右スピーカーの間です。

以下は比較の為、サラウンド以外のも記載しています。

1ch (モノラル/モノフォニック)
1つの音響信号しかない。
前方に1つのスピーカー配置や片耳用イヤーフォンで再生する。
2ch (ステレオ/ステレオフォニック)
オーディオCDなど、音楽再生に多く採用され普及している。
左右に1つずつ計2つのスピーカーや、両耳用イヤーフォン(ヘッドフォン)で再生する。
録音や編集、再生方法で疑似的に立体音響(バーチャルサラウンド)を再現できる。
4ch (4チャンネルステレオ/クアドロフォニック)
前方左右と後方左右の4つのスピーカーを配置する。
マルチチャンネル立体音響再生の先駆けであるが、メーカー毎に規格が違い普及しなかった。
4ch (サラウンド 3−1)
前方左右の間にセンタースピーカーを配置し、後方にも1つサラウンドスピーカーを置く。
映画館のように広い空間だと場所によっては左右の定位が不安定になる。そこで中抜け防止と画面中央からセリフが聴こえるようにセンターチャンネル(C)が設けられた。
さらに後方へサラウンドチャンネル(S)を配置し、前後の移動も可能になり、映画音声の表現方法が広がった。
5.1ch (サラウンド 3−2−0.1)
最も普及しているサラウンド再生方式。
サラウンド3−1方式のサラウンド(後方)チャンネルをステレオ化し、後方左右に配置する。
DVDやBlu-ray Disc、サラウンドテレビ放送など多くコンテンツが5.1chサラウンドを採用している。
さらにLFE(低音効果)チャンネルを追加。
ホームシアターの構築ならまず、この5.1ch再生を目標にしたい。
6.1ch (サラウンド 3−3−0.1)
5.1ch配置に後方センタースピーカーを追加。
「ドルビーデジタルサラウンドEX」や「DTS-ES」の6.1chフォーマットは、5.1chシステムで再生できる互換性がある。
ブルーレイディスクが普及して6.1ch収録ソフトも多く発売されているが、サラウンド標準とまでは普及していない。
7.1ch (サラウンド 3−2−2−0.1)
6.1chの後方センターを左右に分離。
従来のサラウンド(後方)スピーカーをほぼ真横に移動しています。
さらにリアルな臨場感を味わえます。
ホームシアターで組める現実的システムとしては、最多の配置ですが、7.1ch収録されているソフトが多くは無いのが現状。
7.1ch (サラウンド 5−2−0.1)
前方に5つ横並びにして、後方左右に2つ配置。
SDDS(ソニー・ダイナミック・デジタル・サウンド)システムで映画館用の規格。
ワイドスクリーン上映で音抜けが無いように開発したが、採用している映画や映画館が少なく、普及していない。
22.2ch (上下3層 三次元立体音響)
NHK放送技術研究所の高臨場感立体音響システム規格。
上層9チャンネル、中層10チャンネル、下層3チャンネルそしてLFE(低域効果)チャンネル左右。

音声フォーマット

音楽に詳しい人なら、「ドルビー」を聞いたことがあると思う。
ドルビーは、正式にドルビーラボラトリーズ(Dolby Laboratories)でアメリカにある企業名。
元々はカセットテープ等の音声ノイズ除去技術でしたが、映画音声を中心に音声圧縮やサラウンド技術の世界標準となっています。
時代と共に様々なフォーマットが開発された経緯で、「ドルビー なんちゃら」が存在するので初心者は混同する原因にもなりますが、サラウンド再生には最低限の知識が必要になるので覚えておきましょう。

音声フォーマットの再生には機器(プレーヤー、アンプ等)にデコード(復号。符号化・圧縮を元に戻す)機能が備わってなければ再生できないか、下位フォーマット再生されます。

ドルビーと共に有名なDTS(デジタル・シアター・システムズ)も同じようなフォーマットが開発・普及しています。ドルビーをベースにDTSも下段に解説しています。

ドルビーデジタル(Dolby Digital / AC-3 / DD)
映画音声をはじめ、様々なコンテンツに採用されているデジタル音声フォーマット。
DVD-Videoの標準音声規格の1つとなっている。(もう1つはPCM)
あくまでデジタル信号により音声を圧縮するのが目的なので、ドルビーデジタルでも1ch〜5.1chまで存在する。
ドルビーデジタル(Dolby Digital)≠サラウンド音声
DTSでは、DTS デジタルサラウンド(DTS Digital Surround)。
Blu-rayプレーヤーでは再生可能だが、DTS未対応のDVDプレーヤーでは再生不可。

ドルビーデジタルサラウンドEX
6.1ch再生に対応したデジタル音声フォーマット。
ドルビーデジタルの上位互換であるため、5.1ch再生環境でも再生が可能。
DTSでは、DTS-ES(6.1ch)。DTE-ES非対応機でも、DTSに対応していれば5.1ch再生が可能。
ESには「Discrete6.1(ディスクリート)」と「Matrix6.1(マトリックス)」2種類存在し、ディスクリートは後方のセンターチャンネルを独立記録、マトリックスは後方センターを後方左右へ振り分けて記録する。

ドルビーデジタルプラス(Dolby Digital Plus / E-AC-3 / DD+)
ブルーレイ等の次世代メディアのサラウンドフォーマット。
BDでは最大7.1chで収録可能。
デジタルプラスの接続はv1.3以降のHDMIケーブルが必要となる。
DTSでは、DTS-HDハイレゾリューションオーディオ(DTS-HD High Resolution Audio)。

ドルビーTrueHD
ブルーレイでは最大7.1ch、16チャンネル以上が可能(オプション音声)
最大の特徴は可逆圧縮(ロスレス圧縮)方法であり、圧縮した音声を完全に元に戻して再生することが可能。
DTSでは、DTS-HDマスターオーディオ (DTS-HD Master Audio / DTS++) 。
ドルビーTrueHDと同じく可逆圧縮。
下位互換でTrueHD非対応機でも再生可能だがその場合は非可逆圧縮再生となる。

ドルビープロロジックU(Dolby Pro Logic II)
サラウンド5.1chをステレオ(2ch)音源に収める技術。
ドルビープロロジックUでエンコード(符号化・圧縮)した2ch音声を対応機で再生すると5.1chサラウンドを再生できる。PSやWiiなどのゲーム機にも採用したソフトが多い。
さらにステレオ音声をサラウンド化も可能で、ドルビープロロジックUでエンコードされていない場合でも5.1chサラウンドに拡張して再生できる。
プロロジックIIxは7.1ch、プロロジックIIzは9.1ch再生が可能な後継技術がある。
DTSでは、DTS Neo:6。
あらゆる2ch音声を5.1〜7.1chへ再生可能。
CINEMA(シネマ)とMUSIC(ミュージック)の二つのモードが存在する。

シーン・機材

サラウンドを楽しむには最低限の設備投資が必要になります。
環境条件や、自分の目標とするサラウンドシステムを目指して機器を選択しましょう。
ホームシアター
サラウンドサウンドを楽しみたいと思っている人は、設置環境さえあればホームシアターにしたいと思っていることでしょう。
技術の進歩で「バーチャルサラウンド」も臨場感の高い立体音響を楽しめるようになりましたが、後方にスピーカーを設置したホームシアターシステムには総合的にやはりかないません。
ホームシアターといえばプロジェクターで大画面スクリーンで観るイメージが強いかもしれませんが、液晶やプラズマテレビが大型化で価格が下がっていますのでスクリーンでなくても十分楽しめます。
映画館の迫力に近づけるには映像より音声の方が重要だと思います。
スピーカーの音量(音質)と方向、低音域(サブウーファー)の再生能力が優れていれば制作者が意図する音声が自宅で再生できます。
敷居が高くなってしまいますが、目標とするのは高性能なスピーカーでシステムを組みたいですね。

フロントサラウンドシステム
迫力のある音で、手軽にサラウンドを楽しみたい人はフロントシステムがおすすめです。
「フロントサラウンドシステム」と言っても多用な種類が存在し、共通して言える事は「スピーカーが前方にしかない(後方スピーカーが無い)」ということです。
ステレオスピーカーにサブウーファーを組み合せた2.1chシステムで擬似サラウンドを再生するシステム。ラックに内蔵された製品やバー型の物まで多彩です。
中にはチャンネル数以上のスピーカーを内蔵しているものや、壁の反射を利用して後方からサラウンドチャンネルを再生させる製品もあります。
あくまでもフロントだけの設備なので、本格的にセッティングされたホームシアターシステムにはかないませんが、どうしても後方に設置できない場合には次に選択したいシステムです。

PC(パソコン)
TVや映画、ゲームはパソコンメインの人は、PCにサラウンドスピーカーを繋げてみましょう。
多くのデスクトップパソコンの場合はオーディオポートにアナログ7.1ch出力ジャックが搭載されています。商品数は少ないですが、PC用アナログサラウンドスピーカーシステムに接続すれば安価でサラウンド環境を構築することが可能です。
PCでも高音質で、本格的に楽しみたい人はデジタル出力でAVアンプに繋げることもできます。もしもノートパソコンやデジタル出力のないPCでも、外付け(USB等)サウンドI/Oで各種出力が可能となります。
PC専用ヘッドフォンもありますので、気軽に楽しみたい人は選択肢の一つです。
DVD、ブルーレイ共にサラウンド再生には音声フォーマットに対応した再生ソフトが必要になります。

サラウンドヘッドフォン
集合住宅や深夜の視聴などで大きな音が出せない人は、ヘッドフォンでサラウンドを楽しむことができます。
ドルビーヘッドフォン技術を搭載したヘッドホンやアンプ製品であれば、5.1ch等のサラウンド信号を擬似的にヘッドフォンで聴くことができますし、2ch音声もドルビープロロジックIIと組み合わせるとサラウンドサウンドで楽しむことが可能です。
実際にチャンネル数分を再生するスピーカーを搭載した、リアルサラウンドヘッドフォンも存在します。
もう1つメリットは、シビアなセッティングが不要なことです。画面さえ見えれば位置がずれていても、動き回っても音声はスイートスポットから外れることがないのがヘッドフォンの魅力です。

バーチャルサラウンド
バーチャル(仮想・擬似)サラウンドは便利なサラウンドを楽しむ方法のひとつです。
2ch音声をサラウンド風に聞かせたり、マルチチャンネル信号をヘッドフォンやステレオスピーカーでオリジナル音声に近いサラウンド感を再生するのがバーチャルサラウンドです。
ドルビーやDTSでも規格がありますし、アンプなどにはメーカー独自のバーチャルサラウンドモードが搭載されている製品が多いです。
機器を選ぶ時にはドルビーやDTS等の技術に対応した物を選ぶと良いでしょう。
バーチャルサラウンド技術
内容 名称 メーカー
2ch音声をマルチチャンネル化再生 ドルビープロロジックII(IIx、IIz)
DTS Neo:6 DTS
ヘッドフォン向け多チャンネル再生 ドルビーヘッドフォン Dolby
ステレオスピーカーで多チャンネル再生 ドルビーバーチャルスピーカー Dolby
PC向け多チャンネル再生 ドルビーホームシアターv3(v4) Dolby